新聞勧誘。

sakaeyusuke2007-01-21

20日、2007年一発目のライセンスのENJOYがあった。

M−1効果もあったのだろう、新規のお客さんが増えてたみたいで

ルミネは500オーバーのパンパン。内容もリニューアルしてお送りしたんだけど、

来た人はいかがだったでしょうか?


自分が関わってるライブだから言うんじゃないけど、たぶん月イチのライブとしては

限界っていうぐらいのクオリティとプログラムだったんじゃないでしょうか。

これを毎月作っていくんだから、ライセンスはやっぱ舞台も大好きなんだなぁ〜って

思います。次回は2月17日、お楽しみに。


さてさて、そんなENJOYが明けて翌日の話。

自宅で宿題をするためにパソコンを叩いていた日も暮れた頃。

ふいにピンポーンと、玄関のチャイムが鳴った。「NHKだったらめんどくせぇな」と

一度は無視するも、しつこく鳴るチャイム。普段は事前に知った来客しか出ないのに、

その時は何故か「ま いっか」と思いつつ、ドアを開けてしまった。

開けた瞬間「うわ、ビックリした!」と言いながら立っていたのは、

タバコ片手に眼光鋭い、明らかに裏社会のオーラが漂う

つのだ☆ひろみたいな顔のオッサン。

「あれ、俺金借りたっけ?」と、目をまん丸にするビル。

するとオッサンが矢継ぎ早に切り出した。



つのだ 「兄ちゃん、引越しの予定ってあるか?」



頭の上に思いっきり「?」のマークを浮かべつつ、何となく何かの勧誘だと

察知した自分は、とりあえず「はぁ、秋に引越し予定です」と答えた。

つのだ「そうか、そりゃよかった!ほんじゃ新聞とって欲しいねん」


また「?」。何で引っ越して、新聞とるのがちょうどいいんだ?


その質問をすると、つのだが「ちゃうねん、聞いてぇや」と言い出した。



つのだ 「とりあえずな、契約の件数が欲しいんや。契約の数でおっちゃんら、
    シノギをもらってんねん。でも兄ちゃん、引っ越すんやろ?
    ほんじゃ兄ちゃん、新聞とられへんやん。ほんじゃおっちゃんら、
    丸もうけやねん」



説明もよく分からない・・・。ただシノギというキーワードが出たことで、

疑惑が確信に変わった。



ビル 「あの〜とりあえず、僕新聞読まないんで・・・すみません」



ドアを閉めようとした瞬間、ドアに足を引っ掛けて閉めさせないようにするオッサン。



つのだ 「ちょお待って、今テレビやってんの、サザエさんか?



テレビから漏れる音を聞いて、オッサンが謎の質問をしてきた。


サザエさんはエンディング曲を迎え、次回予告のナレーションが流れている。



つのだ 「サザエさんの終わりのジャンケンあるやろ?おっちゃん、あれ
    仲間内で賭けてんねん。ちょっとジャンケンだけ聴かせてくれや」



う・・・嘘だ。いくらヤクザといえど、何て可愛らしい賭博をしているんだ。


真剣にテレビの音に耳を傾けるオッサンと、ドアノブを握ったままのビルの、

気まずい時間がしばし流れる。



つのだ 「ところで兄ちゃん、関西やろ?言葉のイントネーションで分かるわ!」



サザエさんは? オッサンはもう、なかったことにしている。



ビル 「まぁ、関西ですけど・・・」


つのだ 「どこ?関西のどこ?」


ビル 「兵庫県です。兵庫の淡路島」


つのだ 「へぇ〜〜、淡路かいな〜!!奇遇やな、おっちゃんも兵庫の加古川やねん。
    淡路やったら、今度玉ねぎ送ってくれや!



・・・何で?初対面のヤクザに?



つのだ 「なぁええやん、新聞とらんでええから、名前だけ貸してくれや〜。
    同郷のよしみで、な?な?」



ちなみに淡路と加古川、距離が遠いもおろか、何のゆかりも由縁もない。

「いやぁ〜新聞読まないんです〜」と濁しつつ、何度もドアを閉めようとするも



つのだ 「ちょお待って待って、ちくびダブルクリック!」


と意味の分からないボディタッチで場を繋ごうとするオッサン。

だんだん苛立ちが募るビル。



つのだ 「なぁ頼むわ〜!おまえ新聞読んだりせぇへんの?」


ビル 「はい、ネットもあるんで・・・」


つのだ 「何で?おまえの年頃やったら新聞ぐらい読まなあかんちゃうん?」


ビル 「まぁそうですけど、読みたい時は駅とかで買うんで・・・」


つのだ 「そんな毎日駅で買うてたら金かかるて!おまえみたいな若い奴は
    そんな金もないやろ〜」



そろそろイライラが限界に来たビル。



ビル 「あの〜どれだけ言われても新聞はとらないですし、あと初対面で『おまえ』って
   言われる筋合いもないんで・・・すみません」



再度ドアを閉めようとすると、オッサンの顔色が変わった。



つのだ 「『おまえ』の何があかんねん?」    


ビル 「いや、だから初対面ですし・・・」


その表情から「あれ、もしかして俺、殺される?」と思った。


つのだ 「兄ちゃん、ええこと教えたろ。『おまえ』っていう言葉はな、昔は『御前』って書いて、
    目上の人に使う言葉なんや。だからおっちゃんが兄ちゃんに『おまえ』っていうのは、
    何にも間違ってないんや〜!!



おっさんの「間違ってないんや〜!!」が夜空にこだまする。


凍りつくビル。



つのだ 「ということで兄ちゃん、新聞とってくれや」



さっきまでの表情は一転、笑顔でまとめに入ってまた勧誘するつのだ。

ここで負けちゃいけないと、さらに抵抗を続けるビル。



ビル 「でも僕、新聞とるお金なんてないんすよ」


つのだ 「ウソつけ〜儲かってるくせに。仕事何してんねん?」


ビル 「えっと、作家です。吉本の芸人さんの台本書く仕事・・・」


つのだ 「え、自分吉本なん!?こりゃまた奇遇や!実はワシの知り合いにも
    吉本の奴がおってなぁ〜・・・」



ここから、全く知らない大阪の若手落語家の話を15分ほど聞かされる。

オッサンの機嫌を損なわないよう「へぇ〜」「マジッすか?」「スゴイですねぇ〜」の

3パターンのあいづちでその話題を切り抜ける。



つのだ 「・・・というわけなんや。で、新聞とってくれや!」


ビル 「でも、お金ないんで・・・」


つのだ 「よし、分かった!じゃあ月なんぼやったらとってくれんねん?」


新聞の月額の相場はだいたい3500円程度。そんなに高いもんじゃないけど、

仕事柄ほとんど自宅に帰らない自分にとっては、ホントに無用の長物なのだ。



ビル 「・・・じゃあ、200円ぐらいなら」


つのだ 「よし、じゃあ月200円に負けるわ!」



!!?



つのだ 「じゃあ今から3か月分1万いくらの銭を渡すから、それを集金来た時に
    払ろてくれたらええわ!」



本当に財布を出してきたオッサン。怪しい!限りなく怪しい!!!

これには絶対何か裏がある!



ビル 「いや、ちょっと待って下さい!でも僕引っ越す予定(ウソ)なんで、
   今お金もらっても集金の時に払えないっすよ!」


つのだ 「ほんじゃ引越しの時期はいつやねん?とりあえず契約だけして、
    引っ越したら契約破棄になるから。とりあえずおっちゃん、件数だけ欲しいんや」



そこからまた「頼むわ」「勘弁してください」の攻防が30分ほど続いた。

そしてサザエさんの次の平成教育委員会が終わる頃、根負けして

申し込み用紙にペンを走らせる自分がいた・・・。



つのだ 「ありがとう!ほんじゃ兄ちゃん、頑張ってや!!ちくびダブルクリック!



最後の謎のボディタッチを残し、あっさりと帰るおっさん。

しばらく玄関に呆然の立ち尽くすビル。住んで今年で4年目になるが、東京、怖い。

新しい家を探さねば・・・

握らされたビール券で、飲めない酒を飲んでしまいたくなる、そんな切ない夜だった。