犬とAV。

sakaeyusuke2005-09-03

冒頭から唐突だが、私は犬が怖い。でも決して嫌いではない。

ちびっこい子犬はカワイイとも思うし、頑張れば抱っこもできる。

だけど、怖い。




サカイストの将芳さん宅にオジャマした時も、ライセンスの井本さん宅に仕事で行った

時も、愛犬家であるお二人は、まるで孫を見るじいちゃんのように飼われている犬を

可愛っていた。だけど「坂恵も抱っこしてみるか?」と愛犬を差し出されても、

私は油の切れたロボットのように固まった抱っこしか出来なかった。確かに私の腕に

抱かれたその円らな瞳は、とても愛くるしく思えるのだが・・・。




思えば犬が怖くなったのは、忘れもしない、高校生の時だった。

それまでも別に好き!ってほどじゃなかったけど、まぁ吠えなきゃ触れるし、

実家で飼っていた犬を散歩に連れて行ったりもしていた。あの忌まわしき経験を

するまでは・・・





高校生のある日、友達の家に遊びに来るよう誘われた。

「上物が入ったから、みんなでAV鑑賞会しようぜ!!」っていう若いエロリビドー

大爆発の男子たちがよく行う、秘密のお楽しみ会だ。当時この秘密のお楽しみ会を行うに

当たって、幾つかの鉄則があった。



1つ目は「お楽しみ会は集合場所の家の親が眠った0時以降からであること」

2つ目は「上映中はあまりにも生唾を飲むので、各自必ず水分補給できる飲み物を

     持ち寄ること」

3つ目は「各自、鑑賞会後はムラムラした気持ちになる事であろうから、即座に帰れる

     交通の便で来る事。主に原付が望ましい。これは家主への気遣いでもある」



以上のことを踏まえて、当時のツレたちと度々このような鑑賞会を催していた。

しかし今回このイベントの発起人であり家主であるT君が、以下の追加注意点を

言ってきた。


T君「あのさ、うちで飼ってる犬なんだけど、家族以外の人が来たらすげぇ
   吠えるんだよな。だからできるだけ犬を興奮させないように、気をつけて来て。」


なるほど、犬の鳴き声で親が起きたりでもしたら大変だ。でもそんなに吠える犬なんだ。


ビル「噛んだりはしない?」
T君「それは大丈夫、ちゃんと鎖でつないでるから。でも近寄っちゃダメだよ。」


それなら安心だなぁ。

学校が終わり、私は即座に帰宅。当時自分の部屋にテレビとビデオがなかった私はAVとは

無縁の生活を強制されており、上物と呼ばれるビデオに期待を膨らませて、一刻も早く夜が

更けるのを待った。息子が今夜そんなイベントに参加するとは知らずに囲む、微笑ましい

家族との夕食。味噌汁を飲みながら、息子はたわわに揺れる見ず知らずのAV嬢の

おっぱいに頭がいっぱいだった。



そして夜更け、私の家族もみんな寝たようだ。そろそろ出発の時間だ。

「お父さんお母さん、悪い息子でごめんな・・・」


そうつぶやきながら当時取ったばかりの原付の免許でバアちゃんの愛車のカブにまたがり、

なるべくバイクの音が聞こえないよう家から少し離れてエンジンをかけ、こっそりと

家を抜け出した。当時は自分を「まるで尾崎みたいだな」と思っていたが、今考えれば

ただのエロパワー爆発のダサダサ坊主である。


一刻も早くT君の家へ!!


カブのアクセルはフルスロットル。ついでに股間もフルスロットル。

やがてT君の家の光が見えてきた。さぁ着いた、素敵なお楽しみ会の会場へ!

原付でT君の家の庭に入ろうとした時、彼の追加注意点を思い出した。


「そういえば犬に気をつけてと言っていたよなぁ」


でも鎖につないでるって言ってたし、そーっと入っていけば大丈夫だろ・・・。

カブのエンジンを切り、そーっと庭に入っていく私。

暗くてよく分からないが、10メートル先ぐらいに犬小屋がある。

ビル「そーっと・・・」




その時だった。


犬「ワン!ワンワン!!」

気付かれた!雑種犬が犬小屋から飛び出して、ワンワン吠えてきたのだ。

ビル「しー!しー!」

吠えてる犬は恐ろしい。何て気性の荒い犬なんだ。私はできるだけ犬と距離を保ちながら

通り過ぎようとする。鎖につながれてるのなら、ここまで襲っては来ないはずだ。


犬「ワン!ワンワン!!」

え?暗いからよく見えないけど、犬が近寄ってきてる?

犬「ワン!ワンワン!!・・・ガブッ!!」

ビル「痛ぇえええええええええええっっっっ!!!」




太ももをバックリ噛まれてる!!私は思わずカブのエンジンをかけて、外の方に

走り出した。犬は私の太ももを噛んだまま、ズルズルと引きずられてる!

な、なんと、鎖が20メートルぐらいの長さがあるじゃないかっ!!

これは鎖につながれてるレベルの長さじゃあるまい!!

彼は自由だ!

めっちゃ自由に動き回れる!!

ほぼ野良犬だ!!!

私を噛んだままの犬を20メートルぐらいカブで引きずった後、鎖がピンと張り、やっと

犬は離れてくれた。私は痛さと恐怖に怯えて、そのまま自分の家に帰ってしまった。




自分の部屋に帰ってズボンを捲くってみると、犬の歯型がバッチリ。

私はその夜、太ももに消毒した後の染みる痛みと、鑑賞会に参加できなかった

ムラムラ具合で眠れなかったのを今でも覚えている。







・・・それから私は、犬が怖くなった。でも今になってあの日のことを振り返ると、

私を噛んだあの犬は、夜ごと友達と集うAV鑑賞会に、健全なる若いパワーをもっと

他で発揮せよと、体を張って何か警鐘を鳴らしてくれたのではあるまいか。

・・・んなわけない。