つげ義春。
みなさんは、つげ義春って漫画家をご存知ですか?
60年代終わりの貸し本漫画の時代に「ガロ」という雑誌でデビューして、
80年代に入って以降、まったく作品を描かなくなってしまった自由気ままな
漫画家さんだ。
つげ義春の有名な作品をあげると、「ねじ式」「無能の人」「紅い花」
「ゲンセンカン主人」などなど名作揃いなんだけど、同年代の人で読んでいる人は
少ないと思う。
「ねじ式」は数年前に浅野忠信主演で映画化されのだが、あの作品の不思議な世界感を
わりと忠実に再現していて、とっても秀逸だった。
簡単に概要を説明すれば、ある青年が「メメクラゲ」という架空の海の生物に
腕の血管を食いちぎられ、街に出て医者を探すんだが、その街がパラレルワールドで、
どうも様子がおかしい。街で病院の場所を聞くために色んな人に話しかけるんだが、
会う人会う人どこか奇妙で、ちゃんとした答えを教えてくれない。そんなストーリーが
あるようなないような、フワフワした夢の中のような話だ。
私もこの「ねじ式」を最初読んだ時は「なんじゃこりゃ!?」と思ったけど、
この人の作品は何度も読むうちに深みにハマる。何か読んでるだけで後ろめたいような、
暗い闇に溶け込むような・・・そんな感じがとても心地いいのだ。
そして絶対外せないのが「無能の人」!
こちらも既に、竹中直人さんの第一回監督作品として映画化されている。
社会に順応できない貸し本漫画家が、嫁さんに白い目を向けられながら始めた商売が、
元手のかからない、河原の石を拾って売るお店。勿論そんな物を買う
物好きな客はいない。
ただ毎日毎日彼は河原で石を拾って、ボロ小屋の軒先に並べて、川の流れを
ボーっと眺めているのである。
私はそんな落ちぶれたこの主人公に、どこか共感を覚えてしまう。
今の私もまぁ、似たようなものだからだろうか・・・。
こんな川を毎日見つめるだけの生活なんて今は絶対ごめんだけど、
年を食ったらそれも悪くないかもしれない。
ただ安心のために、ちょっとずつでも貯金は貯めこんで・・・。
心のどっかで侘しい人間の原風景を求めてる人、
そんな人いるのか分からないけど・・・
つげ義春、オススメです!